放課後の家族/吉岡ペペロ
 
店でわたしはメロンソーダを飲んだ。横のテーブルでは父が演歌歌手と打ち合わせをしている。喫茶店では3人くらいたぶん20代くらいの女のひとが働いていて、3人でひそひそ話している。わたしは父の娘ということで視線を浴びていた。しんどかった。

あの頃わたしは憂鬱だった。友達や勉強が理由だったのではなくて、父や母が理由だったような気がする。
そう言えばふしぎなことがあった。
わたしは学校からの帰り道、田んぼ道を通って近道していた。真夏で雨の日だった。
向こうから真夏なのにスタジャンを着た男のひとがあるいてきた。すれちがって人気のない細い道にさしかかったとき持っていた傘が吹っ飛んだ。口をふさがれ道横
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