白い部屋/愛心
 
囚人のような衣服を着せられているが、私が一体どんな罪を犯したというのか。
手足に鎖はなく、乱暴なことをされたような形跡もない。
私には手がある、足がある。
目がある、耳がある、鼻がある、口がある、歯がある、舌がある。
四肢の不備は感じられない。だが、思い出せない。
私は何者だったのか。
名前は、年は、家族構成は、どこに住み、何をして暮らし、生活をしていたのか。

私は何者だったのか。

時計もない。外の光が自然物か、人工のものかも分からない。
分からない。何なのだ。これは夢か、それとも現実か。
有刺鉄線に触れた。肉が裂け、痛みと共に、真っ赤な血が滴った。

生きているこ
[次のページ]
戻る   Point(2)