拝啓 きみがいた世界へ/笹子ゆら
 
たしの心の中には、まだきみが巣食っているから。

特別に仲がいいわけでもなかった。
最後に会ったのは半年前で、
ふたりでご飯を食べたけれど
思えばその時から悩みは尽きなくて、
あれからずっと、きみは苦しかったんだろう。

きみが死んだと聞いた時、
自ら命を絶ったと聞いた時、
わたしは、ああそうかと、静かに納得してしまった。
悲しみよりも先に立ったその思いは、きみの死を受け入れるには役立った。
それほどに、きみはもがいていたのを、わたしは忘れていたのだ。

救えたわけではなかったろう。
きっと、あの時なにを伝えたところで、命は滑り落ちてしまったはずだ。
わかってはいる
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