蟹妻/チアーヌ
 
すか?」
「いや、うーん。事情があってさ」
「事情ってなんですか?そういえばこのあいだも言ってましたけど」
話していいものなのだろうか。僕は少し迷ったけれど、話し始めた。
「実は、僕の妻が、変身したらしいんだ」
「はぁ?どういうことですか」
「朝起きたら、隣に蟹がいたんだよ。妻が寝ているはずの場所に」
「蟹がですか?」
「ああ、蟹が」
「蟹って、たらばとか、ずわいとか、そういう・・・」
「たぶんな」
「あのー、よくわかりませんけど」
後藤は大きく息を吐きながら言った。
「僕は思うんですけど、それって、奥さんが蟹を置いて出て行っただけじゃないんですか?」
僕は黙った。

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