蟹妻/チアーヌ
 
、水を用意するからな」
僕は慌てて起き上がり、風呂場へ行き、たらいに水を張り、蟹を入れた。
蟹は喜んでいるように見えた。
「祐子・・・。どうして蟹なんかに・・・」
僕は混乱する頭を必死になだめながら、会社へ行くしたくをはじめた。
いつもなら、スーツとワイシャツとネクタイは、祐子が用意してくれている。今朝はそれが無いので、僕は戸惑いながら着替えを済ませた。
きっと、蟹になってしまったから、僕のスーツの用意もできなかったんだ。かわいそうな祐子。
僕は風呂場へ顔を出し、
「それじゃ会社に行って来るよ、祐子」
と声をかけ、家を出た。

会社へ着いて、仕事をしているうちに昼飯の時間にな
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