蟹妻/チアーヌ
になった。仕事に集中しているときはなんとか普通でいられたのだが、昼飯の時間になってしまうと、集中が途切れ、どうしても蟹になってしまった祐子のことが気になる。
「聡史さん、どっか昼飯でも行きましょうよ」
後輩の後藤が声をかけてきたので、僕は軽くうなずいて立ち上がった。
会社の近くのコーヒーショップでパスタを頼んだ。後藤はもっと腹持ちのいいものを食べたかったらしいが、僕が気乗りしなかったのと、会社の人間がたくさんいる定食屋へ行く気になれず、人の少ない店を選んだのだ。
「聡史さん、どっか具合でも悪いんですか」
食後のコーヒーを頼むと、後藤がタバコに火をつけながら話かけてきた。
「いや、ちょっ
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