蟹妻/チアーヌ
朝目を覚ましたら、隣で眠っているはずの妻が、蟹になっていた。
かさかさ、もぞもぞ。
全長40センチくらいはあるだろうと思われる蟹が、妻の枕のあたりでうごめいていた。
僕は驚いて体を起して、メガネをかけ、じーっと蟹を見つめた。蟹は泡を吹き始めた。どうやら本物の蟹のようだ。
「ど、どうして・・・・」
口の中でもごもごとつぶやいてみたが、らちが明かない。
家の中から、妻が消え、蟹がいる。
これはやはり、妻が蟹になったとしか思えない。
「ゆ、祐子。お前、祐子なのか」
蟹は泡を吹き続けている。これはたぶん、僕に自分が祐子であることを知らせようとしているのだろう。
「ま、待ってろよ、今、水
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