悲鳴/島中 充
 
度を上げ、着いて行くにはサードにほうりこむしかないと竜男は思った。これしかない、これしかないとクラッチを踏んだ。エンジンブレーキが切れた瞬間、限界まで張りつめていた糸はプツリと切れた。オートバイは横転し、ステップが地面に引っ掛かりスピンした。くるくる回転するねずみ花火のように火花をまき散らした。肉体を挟んだままアスファルトで肉はそぎ取られ、回転しながら雑木林のガードレールに激突した。頭から突っ込み、捻じ曲げられた鶏頭のようにフルヘルメットはあらぬ方を見ていた。後について走っていた女はオートバイをそのまま横倒しに投げ出した。竜男に駆け寄った。彼女の脱ぎ捨てたヘルメットはアスファルトに跳ね返りカランと
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