悲鳴/島中 充
 
ンと乾いた音を立てた。覆いかぶさるように彼にしがみついた。言葉にならない悲鳴で声の限りに呼んだ。恋人の名を。
「あーあーうーうー、あーあーうーうー。」

            ******
信也のカローラは竜男の逝ったプラチナに輝くS字カーブにさしかかった。オートマのドライブDからセコンドにシフトダウンした。外側車線から内側車線へブツブツという凸凹の揺れを感じながら加速していった。かつて、工員のタニシであった頃の鬱屈した思いがよみがえってきた。あーあーうーうー悲鳴が聞こえて来る。竜男の死に様が頭をかすめた。なにもかも壊れてしまえ。オートバイの奴をひき殺してやりたいという殺意がフツフツと湧き上がってくるのを感じた。娘を乗せたまま、アクセルを踏み込み、加速させていった。




戻る   Point(1)