悲鳴/島中 充
 
傾ける。恐れるな、怖がったらヤバイ。マシーンを目一杯傾け、左足だけを開いてバランスを取り、膝頭が地面すれすれに、マシーンのステップはアスファルトにこすれ、シュシューと暗がりに火花が飛んでいる。恐れるな、怖がったらヤバイ。竜男のみごとなコーナリングだった。カペラはキュキューッとタイヤをきしませながらコーナーを回っていた。バックミラーでステップから火花をちらしている竜男を見てカペラのドライバーはニタリと笑った。これでもついてこれるかと、最後の立ち上がりいっきに加速した。オートバイを引き離しにかかった。「あのカーブはよう、セコンドで八十まで引っ張るのさ、それが限界よ。」十分に判かっているはずなのに速度を
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