悲鳴/島中 充
感じていた。俺にだってやろうと思えばできるのだと信也は思った。
一九七八年、現在のように暴走行為をさせないための凸凹は臨海線に作られていなかった。浜寺水路を渡る片側四車線のできたばかりの広い平らな路面は、S字カーブが逆バンクになっていて、外側車線から内側車線が下り坂になっていた。アウトからインにつんのめってカーブが始まり、インからアウトに公園の雑木林に突っ込むように終わっていた。レーサー暴走族にとってこの上なく危険で面白い場所であった。暴走する者、見物する者、つっぱった若者たちがコンビナートの水銀灯に群がる蛾のように上気した顔でたむろしていた。社会からドロップアウトした若者達の己れを誇示す
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