悲鳴/島中 充
だ。「もうわかったよ。」竜男の口癖になっていた。カワサキ五〇〇の黒いボディーをペタペタ叩きながら、「こいつでなら死んでも本望さ。」そして水銀灯に照らされた黒い水路の上、カーブを指さし「あのカーブはよう、セコンドで八十まで引っ張るのさ、それが限界よ。」と言った。竜男はプラチナに輝く臨海線のS字カーブをレーサーのように得意にドリフト走行していた。見物に来ている若者達からいつも喝采をあび、ヒーローだった。「緊張は美だ。これしかない。これしかない」と言いながら見せびらかすように、女の細い腰を引き寄せた。所詮遊びの危険な行為、愚かだとわかっていても、信也はシュツとナイフで切りつけられたような嫉妬を竜男に感じ
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