悲鳴/島中 充
手かぎを左手にきつく握った。以前、信也は暴走族とやりあい、棒で殴られたことがあった。それ以来手鉤を隠し持つことにしていた。凶器を見せてやれば何もしないだろう。来るなら来てみろと身構えてみせる事で何事もなく終わるだろうと彼は思っていた。身構えるまでもなく奴らは何もなかったようにまた向きをかえ蛇行しながら、ブゥー、ブゥー、と吹かして、その先にあるS字カーブの方へ進んでいった。やっと終わった。ほっとして振り返ると後部座席で眠っているはずの娘はおびえ、目を大きく見開いていた。奴らは娘を見て絡むのを止めたのかもしれないと信也は思った。
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二十五年前、一九七八年、信也は真
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