悲鳴/島中 充
 
ートバイはエンジンを吹かせながら蛇行し、ゆっくり進んでいた。彼はブレーキを踏み、追い越さないように注意しながら進んだ。追い越したりすると奴らは必ず絡んでくる。嫌な奴に出会ったものだ。他に車は走っていなかった。八十メートルほど先で不意にオートバイは向きをかえた。彼の方へ蛇行しながらゆっくり逆走してきた。車のすぐ前まで来て止まった。絡んできやがった。仕方なく彼は車を停車した。信也のおびえた顔を見たかったのか、後部座席に乗っている茶髪が握っている角棒を、後輪のステップに立ち上がり、背伸びをしながら高く振り上げて見せた。信也はサイドポケットを開き、奴らから見えないように、いざと言う時のために隠してある手か
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