まぼろしの結晶/ホロウ・シカエルボク
 

貪欲な女のように
何度も囁くのはやめてくれ
満足したりなんかしない
こんな夜の中で投げつけられる材料でしつらえられたまぼろしなんかで


滑り出す?
引き千切られる?
失われる?
再生される?
忘れられる?
思い出せる?
質問には答えが無い
そうした問いばかりを選んで生きてきた
こんな夜が何度訪れても
こんな時間が何度喉を絞めつけても


刃はいつでも食い込んでいる
致命傷にはならないが、深い
運命は境界線を意識させることに慣れている
そこを越えるためのパスポートはまだ持ち合わせてはいない
そこは徹底的に防衛されていて
身勝手に通過することはできない
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