托鉢の僧侶/梼瀬チカ
していたのは視線だけでなく
思うような速さで動けない足に気圧され気圧しそうになりながら
脇目もふらず
はんにゃはらみたしんぎょう 遠ざかりながら
思うようには進んでくれない
背中と背中のあいだ、人いきれの熱気の中
喘ぐように息をする
はんにゃはらみたしんぎょう まだ耳に残っている
青信号が点滅を始め
急ぎ足になるのを
駆け出してゆくのを
多少の危険すら感じながら
はんにゃはらみたしんぎょう 鐘の音だけは響いている
やっとの思いで渡り終え気付けば、肩の荷さえ
下ろす気持ちがして
せっかちなのは信号だったか
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