托鉢の僧侶/
梼瀬チカ
たか
私だったか
振り返ると変わらず僧侶が同じ場所で手をかまえ鐘をたたいている
車が我が物顔に走り始めて
あと数分すればまた
信号待ちの歩行者が当たり前に渡ってゆくだろう
はんにゃはらみたしんぎょう 繰り返す横断の中、これはきっとうたかたの幻だと
派手なクラクションの音、信号が変わる
托鉢の僧侶だけが経文を上げ歩行者達を見つめ続けている
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