公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
 
長に告げると
「もう気付いていると思うが、俺はこの仕事を以前からひとりでやっていたのだ。同じように怖くなった時これを吸っている。これでもやれ」と社長は言った。そして脱法ハーブの入った小さな袋を内ポケットから取り出して渡してくれた。  
脱法ハーブを吸うと平べったく体が床に押し付けられるように重たくなり、仰向きにひっくり返されたゴキブリのようになった。手足を空にばたつかせ、総てがゆっくり動いているようだった。自分が自分であることが分からなくなり、ニンゲンであることが分からなくなった。点けっぱなしのテレビの音が聞こえなくなり、ジィージィーと言う虫の話し声、あの歓喜の声が聞こえた。何を話しているのだ
[次のページ]
戻る   Point(3)