公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
 
リが群がっていた。気持ちが悪いと思った。しかし、そういう事なのだと納得もした。精液を食われ、その中の一つ一つの精子からどんどん赤子のゴキブリが生まれてくるような気さえするのだ。食べているのではなく交尾しているのだと言う気さえしてくるのだ。なんとなく宿命のつながりを感じるのだった。どうせ自分はゴキブリなんだ。小学時代コックローチというあだ名で馬鹿にされ、ずっといじめられた。中学校ではそのように呼ばれることはないだろうとあわい期待を抱いたが、あだ名の由来を知っている同級生がまたもや言いふらしてコックローチから呼び名がゴキブリに変わっただけだった。女生徒から薄汚いゴミ箱をのぞきこんでいる奴と噂され、彼が
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