公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
々しい生き物だと若者は感動さえした。
若者は地下室から出て上の部屋で眠ることにした。押し入れから薄汚れた布団を引きずり出し、六畳の畳のうえに敷いた。ズボンをはいたまま布団にもぐり布団の中でズボンもパンツもシャツも脱いだ。脱いだものを布団から蹴りだして、素っ裸になった。ここに来る前にコンビニで買ってきた雑誌を開いて、性器を握り、いつものように眠った。浅い眠りだった。若者はかさかさという音で目覚めた。夜明け前の薄暗い中、目を凝らすと数匹のゴキブリが、ごみ入れの中の雑誌をちぎって丸めた紙を食べていた。それは前夜、手淫の精液を拭い取ったエロ雑誌の切れ端であった。若者はぎょっとした。自分の精液にゴキブリが
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