公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
 
。」と社長は言った。
 若者はとんでもないと思ったが、その仕事を引き受けることにした。引き受けるしかないと思った。お金がいるんだ。仕事がいるんだ。心の奥底で世の中など、どうにでもなれと思っていた。就職できるなら。お金が貰えるなら。母親も家族もきっと喜ぶだろう。就職先も決まりみんな安心するだろう。
             3
用意された海岸近くの一軒家に行くとそこには地下室があった。床の上に持ち上げるマンホールのふたのような入口が作られていた。人ひとり通れる梯子のような木の階段を降りていくと天井は低く、すでに豆電球の付いている薄暗い部屋があった。床には数十匹の黒く動くものがいた。あいつらだ、
[次のページ]
戻る   Point(3)