公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
 
の後、逮捕されていた学生は心神喪失で不起訴となり、統合失調症で2か月間入院した。
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コックローチマンは公務員試験を受けたが受からなかった。倍率は四十倍を超えていた。大阪や東京の企業も全部だめだった。就職先がなかった。しかたなくコックローチと言う殺虫剤をつくるこの地方の冴えない業績の小さな会社に応募した。お金がいるので働かなければならなかった。面接で当社を受けた理由を聞かれ、幼い頃の話をした。「小学三年生の時、友達の家に行くと土間のテーブルのうえに小皿に米粒大のふわふわした桃色のものが二、三十個乗っていた。ゴキブリが食べれば死ぬコックローチと言う薬剤だ。家の奥にいる
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