公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
中島恭二(島中充)
プロローグ
気が付くと四角い格子の箱に入れられ菫の花に囲まれた駅前広場にいた。衣服を脱ぎ、こげ茶のタイツをはき、海水パンツをはき、広げると蝙蝠のようになるこげ茶色の大きな布を両手に巻き付けていた。びしょ濡れで寒く、白目をむき小刻みに震えていた。若者は周囲を人々に取り囲まれ、指さされ、みんなから笑われていた。地面にへばり付いている巨大な人間の顔を持つコックローチに変身していた。何をしているのだ。一体どうしてこんなことに成ったのか。頭は薄ぼんやりとして、仰向けによだれがひっきりなしに出た。目がきらきらまぶしい。そうだあの社長に貰った脱法ハーブのせいだ。ドラ
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