記憶の怪/ただのみきや
 
を足元だけ見て憂いで通るように
いつも「今」が記憶に作用し「記憶」が今に作用する
記憶と感情はループとフィードバックを繰り返している
とてもいい加減で
大切で真実なもの
別人なのだ 記憶と記録は


わたしは記憶を抱えて記憶と共に生きて往く
わたしも記憶も海に溶ける泡のようなものだ
人は物ほど受け身ではいられないが
それほどものごと思い通りにできる訳ではない
望まずに砕かれて孤独の中で尖るしかなかったもの
生きるために日々己らしさをすり減らすしかなかったもの
時間と共に深層へ沈んだ もう取り戻せないもの
残された記憶は時には炎の棺桶の面持ちでわたしを閉じ込め
時には
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