記憶の怪/ただのみきや
けない
橋から落ちて 流れの中へ
いつまでも諦めきれず 胸がきゅっとしたまま
何処にあるのかわかっているのに
もう二度と手にすることができないなんて
記憶と記録は別人
正確な記録には優秀で客観的な記録者が必要だが
正確な記憶には本人の思い込み以外何もいらない
ひとりの人の記憶(脳の裏表)の量に匹敵する
同じひとりの人の正確な客観的記録
裁きの日の神の巻物か
生きている間にお目にかかれるものではない
忘れてしまう
大切な宝物を箱に仕舞い
秘密の場所に隠しておいたことを
隠し場所を忘れるのではない
隠したという記憶を紛失してしまうのだ
幼心に誓
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