『戦争詩歌集事典』高崎 隆治より、戦争詩を考える。/こひもともひこ
ものに真実を語ることが出来なかつた。
私は詩を書いたが、本当の詩は書けなかつた、
私は今人生の結論を与へねばならない場合にある
心の壁に映つた影の場面は一つ一つ消えてゆく。
私は壁の彼方に、もつと広くもつと深い人生があるやうに感ずる。
私は壁に秘密の門があるやうに感ずる、
私は立つて床の間の門に上り、これに触れやうとする、
門がない、ただ平たく拡つてゐるのみだ。
・カラバル準高原 島崎曙海
(略)
はるか向ふの山かげの窪みには指揮刀を打ちふるつて、
なほもしつこく反抗しつづけてゐる敵陣がみえる。
山砲は地殻をふるはし、正確に地響を立てて敵陣地をふき上げてゐる。
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