『戦争詩歌集事典』高崎 隆治より、戦争詩を考える。/こひもともひこ
 
つしんに飯くふ飯をくふはさびし

あるひは墜ち墜ちしまま手榴弾の音

雷電と血の兵が這ひゐたる壕

一斉に死者が雷雨を駆け上る

ひとときの煙草三百余のいのち


・富沢赤黄男

とある夜は呼吸とめてきく長江の跫

燈はちさし生きてゐるわが影はふとし

寒月のわれふところに遺書もなく

蛇よぎる戦にあれしわがまなこ

流弾に噛んで吐き出す梅のたね

雨あかくぬれてゐるのは手榴弾

砲音の輪の中にふる木の実なり}




この書籍に収録されている短歌・俳句を抜き出していると、単品で意味(戦場風景や兵士の心境)の分かるものと、単品では何を描
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