北原白秋顕彰短歌大会/そらの珊瑚
 
は何かを言わずにいられなかったのではないか、と。
たった一週間の命であるのに、大音量の声で生き抜いた小さな生き物へ「充分に楽しんだかい」と問いかける作者のそのまなざしは同時に、人間を含めた命ある者たちへの生への肯定であり賛歌であるのではないかと思う。「楽しむ」っていいよね。楽しまなきゃソンだ。問いかけの先になんの答えも用意されてないという点も、いい。この世にあふれる問いのそのほとんどに、答えなどないのかもしれない。
蝉の境遇にはおそらく差異はなく、その最期はすべからく行き倒れであるのに、その姿にあわれを感じないというのは、私にとっては発見だった。
人間だったら、こうはいかない。
死を提示さ
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