きみのそばで凍る純粋の季節/ホロウ・シカエルボク
すべての店が軒を下ろした
真夜中の薄明るい街路を
ゆっくりとした速度でぼくたちは歩いた
その夜は12月みたいに寒くて
耐えられなくなるたびに
自動販売機で温かい飲み物を買ったよね
デパートのデジタル時計の下で
話すべき思い出がすべてなくなったとき
ふたりして長い長いため息をついたっけ
それからきみが手洗いに行きたいと言って
でもそのあたりには小さな公園の
鍵の壊れた個室しかなくって
ぼくは勇敢な兵士のようにきみのとりでを守ったっけ
申しわけ程度の植え込みで
秋の虫たちがドサ廻りの楽団のように鳴いていて
きみを待ちながらその音を聞いていると
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