わたしは/ただのみきや
 
たのだ
いつしか醒め 冷め 雨に打たれる残骸となって
手にしたことのないトルフィーやメダルの輝きに網膜を焼かれ
傍らにそっと舞う蛍 遠くから見つめ続ける星々も
眼中に入らなかった
そうはなるまいと高を括り揶揄したものと
良く似た姿が 今ここにある
所有しているものは空気のようで
所有していないものばかりが心を圧迫する
欲望は細るも先鋭さを増して
アカシヤのような棘が自分にも他人にも容赦がない
ああ海鳴りよ 引き裂くカモメの声よ
塩辛い泡沫と共にわたしに寄せて来い
奇形の殻から満ちて来てわたしの砂城を侵食せよ
ああ茫漠の海よおまえは海であることに飽きもせず
尚も玩具のよ
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