わたしは/ただのみきや
のような船を浮かべて海らしく振舞えば良い
海よおまえはわたしの混乱が魚となって泳ぐ場所
おまえは死であり語らぬ教師だ
果たして何者であっただろう
否 もう何者でも構わないのだ
買い手のつかない土地だ
たまたま生えた一本の灌木だ
大きく成長することもなく
脈々とつながる歴史もなく
何かへと作り変えられることもなく
ただひたすらわたしなのだ
土地に買い手がつけば
無造作に伐採され捨てられもしよう
利用価値もなく再生産されず
ただ生きる故に生きて死んで往く
鳥や虫を草花を隣人として
嵐の前の静かな風に踊っている
誰に見せるためでもなく
ただ踊る故に踊り踊るために踊る
名前を持たないもの
時空の居候
雑草に傅かれ王様のようにそよいでもみる
一本の灌木だ
海に研がれて打ち上げられた
あの遠い異国の流木と同じ信仰を持つ兄弟だ
初めから終わりまで
わたしはわたしなのだ
《わたしは:2015年9月12日》
戻る 編 削 Point(12)