わたしは/ただのみきや
 
和を抱き
常に何者かであろうとして
外に内に響きあう符号を探していた
多くを求めた訳ではなく
かと言って無欲だった訳でもない
幾つかの思想や価値感が頭の中を染めて行き
知者になったつもりで物事を単純に色分けした
食べすぎて吐き戻すように本当は消化も滋養を得ないまま
憶えたての理屈をオウム返しに囀っていた
漠然とした怒り
漠然とした恐れ
何かに追われ何かを追いかけ
夢中で盲目で感情的で利己的な正義感で満ちていた
生命力が仇となるほど時間と労苦を散財し
命がけの恋のように心中さながらのめり込んで
だが何かが変わってしまった
否 何も変わらなかったことに気付いてしまったの
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