絶景/吉岡ペペロ
ている。
ひとりぼっちは怖くなかった。あたしは万華鏡のようだった。あたしが現れるだけで、ひとや周りをつまらなくさせる。それは怖いというより、やっぱりという気持ちの連続だった。
あたしは三度の出産と三度の中絶をした。ぜんぶ夏だった。あたしには夏が白くみえる。蟻をつぶすように中絶を繰り返したあたしの記憶には夏の重さだけがのこっていた。あとは白っぽくて曖昧だった。
母がいなくなったのも7月だった。母はあたしが父にいたずらされているのを見た次の日出て行った。学校からもどると母が荷物をととのえていた。最初整理でもしているのかと思ったけれどひとことも喋らない母を見ていて胸がさわいだ。途中弟が朝顔の鉢
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