【驟雨】志なかばでお亡くなりになられた松山椋さんへ/そらの珊瑚
こんにちはが、一緒だなんて適当だね」
「うん、適当で、かっこいいね」
さりゅう、さりゅう……私は幾度も心の中で繰り返す。それらは咀嚼されてポタージュスウプのようななめらかさになり、するりと私の胸に落ちてゆく。
まるで離乳食を与えられた赤子のごとく幸せに満ち足りた。
口に出して友達だと確かめたことはなかったし、彼もテレビドラマに出てくるような恥ずかしいことは求めなかった。おそらく友達というものはそういうものであったのだろう。
私に裏表なく友達と呼べる最初の人は、眼鏡を掛けていて、とても物知りだった。彼の影響で私は『驟雨』の作者の吉行淳之介のファンになった。彼の描く世界こそ、まさ
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