【驟雨】志なかばでお亡くなりになられた松山椋さんへ/そらの珊瑚
他者とうまくやろうと始終びくびくしていた心のじっとり濡れた羽根を、その時間で乾かしていたのかもしれない。
小さい頃から私は引っ込み思案な性質だった。人とのやりとりのささいなことで傷ついたり、逆に自分が人を傷つけてしまうのではないか、とか、考えすぎてますます殻に閉じこもった。
そうして水が海を目指すように、しごく当然のなりゆきのように本が唯一の友達になる。本が語ることは、時に残酷であったけれど、それはフィクションであるという安心感があった。
けれども心の奥底で熱望していたのは、紛れもなく人間の友達だった。
「これ、お願いします」
何度か見かけたことのある、おそらく同学年の男子が
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