KANASHIKI ZAKKAN/岩下こずえ
ったとしても、予想もつかない、終わりなく景色を変えてゆく、残酷なものが横たわる荒野を見続けなければならない目であるよりかは、ずっとマシだ。何より、わだちであれば、僕は消え去るその瞬間まで大地に横たわっていられるのだ。
だが、現実には、僕は目だ。それも、カメラのレンズのように、目の前の世界を好きなように変容できない、否応なくそれに直面させられる、目だ。何が視界に入ってくるのか分からない。だから、僕は怖い。見慣れたものが見えなくなってゆくことも、怖い。
「それなら、帰りたまえよ。車輪の跡を確かめながら、郷里の家へ急げばいい。そこを守りながら、死ぬまで自適に過ごせばいい。」
ああ、
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