KANASHIKI ZAKKAN/岩下こずえ
 
あ、本当にそれができればいいのだが。しかし、分かってくれるだろうか? 僕にとって、僕の背後の世界はすべて破産したのだ。すべて、僕にとって救いとなりうるような価値を引き抜かれてしまったのだ。それは、ごまかしようもなく消え去ってしまった。日々は色を失い、愚かなものに堕した。礎は、礎たりえなかった。

 ならば荒野よ。もっと、硬くなれ。今度は礎が沈み込んでしまわないように。
 大地よ。もっと、硬くなれ。わだちなど残らぬほどに。
 目よ、そむけることなきほどに強くなれ。冷酷なオブジェクトたれ。

「じゃあ、この恐怖は、どうしたらいい?」
 それは、君よ。ふるえつづけろよ。その弱さだけは、変わらずに持ち続けろよ。
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