間近な彼方/ホロウ・シカエルボク
昨日の嵐で砂浜に投げ出された流木
それと
古釘を踏み抜いて駄目になった俺の靴
クラブハウスサンドイッチの奇妙な後味と
昨夜の残骸が浄化される海岸線
約束は
初めからしなかった
カモメがバターナイフみたいに中空を撫でる
風は
朝の方角から吹いてきていた
もう人気の無くなったビーチハウスで
ささやかに流れている少し前の流行歌
タブレットの画面より
正面の誰かの瞳を見つめていた時代の
最後の海は
朝からずっと夕暮れのよう
さよならの言い方を忘れて
空家の札のかかった扉の前で佇んでいるときのよう
気持ちをおざなりにした
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