月の民/dopp
街は、アインを迎えてくれているようには思えませんでした。さらに思うには、星の砂をいつも月の民は運び入れるというのに、街はいつ尋ねても、星の砂をすでに売っている、ということはないのでした。アインは星の砂の詰まった遮光瓶が、店の奥の影、食料を売る人の住む場所にどんどんたまってゆく光景を想像しました。そしていつの日にか、ひょんなことから虹色の光はなだれ、陽の光に触れた砂がさらさらと消えゆくと同時に、店主とその店も虹色の霧になってふっと空気に溶けるのでした。もしかしたら、もしかしたら店主さんはそうなりたいのかもしれないな、とアインは考えます。星の光と一つになって、空気に溶けて、それからあとはどうなるのだろ
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