月の民/dopp
だろう、アインには分かりませんでした。
ふとアインは、自分が街の人の事を何も知らない事に気が付きました。店を持っているわけではない街の人は、いったいいつもどこで何をしているのだろう。実は街の人も皆、街の人のような顔をしていながら、店主さん以外全員が、月を追う放浪生活と街での暮らしを行ったり来たりして、店主さんに星の砂を貢ぎ続けているのかもしれない…そう考えるのはアインの孤独を癒す愉快なことでした。とはいえ、アインは知る由も無いことでしたが、当然街のすべての人々が月の民である、という事はありませんでした。話はそう単純ではないのです。街の人たちはそれぞれ自分の事を、海の民、空の民、森の民、砂の民…
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