左右非対称/こうだたけみ
 
解ってはくれない。姉さんが、「おなかがすいたのならいえにはいっててもいいのよ、とだなにきょうのぶんのおいもがはいっているんだから」と言ってあたしを追いやるのだ。
 手が、小母さんやお姉さんやお婆さんの手が、触手のようにひらひらしている。真っ黒な掌。あたしは知っているのだ。あの黒いのは、あの子が蹲っているのだ。そんなに振られて落ちないように必死だろうに、あの子は、同じ顔と声とを持って、無数の掌にしがみつく。
 ここにいるのは女の人ばかりだった。それはたぶん、安心するからだろう。同じ種のものはとかく馴れ合いやすい。似たようなものが集まって一個の集団を形成する。あたしは、その馴れ合いが厭だ。それはそ
[次のページ]
戻る   Point(1)