左右非対称/こうだたけみ
屋が真っ赤に染まっていた。机の抽斗がひっくり返って中身がぶちまけられている。そしてあたしの右手が机の上で、開いたノートに忙しげに何度も同じ文字を書いている。うそをつけ。
ノートを引っ手繰ると、右手はあたしに向かって鉛筆を投げつけた。そして、机の上からあたしを指差した。あたしは怒っていた。けれどあたしの怒りなど、誰も解ってはくれない。あたしは右手に芋を投げつけ、地団駄を踏み、ノートをズタズタに引き裂いた。振り返ると、部屋の入り口に姉さんが立っている。今にも消え入りそうな姿で、蝶番のあるほうの壁に凭れていた。あたしはなぜか真っ赤になって俯いたが、視界の端で姉さんを盗み見ることは忘れない。夕日に照ら
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