左右非対称/こうだたけみ
照らされてすべてが赤い。姉さんは、今度は聞こえる声で言った。「うそをつけ」。
あたしが顔を上げると同時に、ふいと姉さんは背を向けた。トントンと音をさせて、階段を降りていく。そういえば、上がってくる音はしなかったな。あたしはノートの切れ端を拾い集めて、屑篭にぐいぐいと押し込んだ。
蛍光灯のない部屋は、夜に逸早く捉まる。昼間の明かりの名残が目の中で赤い斑点になって、暗いはずなのに仄かに明るいと感じる。閉じたドアの隙間から漏れ出る光が、部屋中に暗闇が満ちるのを邪魔した。それは、完全なるものの否定であるような気がする。どうにも屑篭の前から立ち上がる気になれない。姉さんはさっきから「ごはんよ、はやく
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