船旅/ただのみきや
 
たり
すでに何もかも知っていると
情報のマッチ棒で建てた城に立て籠もり
孤高の幼児椅子に坐す
猿の木乃伊になるよりもずっと


星の海から星座を見出すより
時空の海原から存在の意味を見出す方が
遥かに困難
困難だから
自由に繋ぎ合わせ形作ることができる
幾重にも幾重にも
花のようなビーズ飾り
誰の首に捧げようか


海よ 茫漠の海よ
鏡のように凪ぎわれらの影を映せ
われらもまたおまえの中のひと粒ひと雫
船よ 人の増減がおまえの喫水線を変えるだろうか
誰もいなくなって
見つめる者もなく
思考する者も絶え
風は誰の頬も撫ぜず
光も人影を生まず
悩みも
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