船旅/ただのみきや
 
みも葛藤もなく
喜びも喧噪もない
船よ やっかいな荷物が消えても
おまえの喫水線は僅かも変わらない


船よ
誕生も死もおまえの上
おまえの果てなき旅路
衣に住み着いたノミのように
幾世代も幾世代も
わたしたちは生きている
嵐が氷山が直撃しても沈まず
わたしたちは滅びない
戦乱が疫病がわたしたちの大半を殺しても
わたしたちは生き残る
わたしたちはわたしたちの子孫は
運ばれる 誕生と死を季節のように巡らし
時が永遠へと滝のように流れ落ちる
終わりの終わり
果ての果て
誰かが視る
なにひとつ残されず
全てが全てとなる
旅の終焉を




               《船旅:2015年8月2日》









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