船旅/ただのみきや
こか願っている者たちは
デルフォイ巫女さながらに
謎めくが意味のない
言葉をゆるゆると垂れ流す
床にこぼれたそれを跪き舐めて
形而上学の味を見出す者
孤独は知性を貝殻のように変容させた
寝覚めの夢の儚さに
確かな意味をもたらしたくて
硬い言葉で論を組むが
何処か何かが足りないピラミッドは
こどもの指で一点を押せば
古い映画のジオラマみたいに
崩れ落ちて行く
人々は幽霊船を見出し
人魚の声に侵されて行く
それはひとつの処方箋だと誰かが言った
いつも混沌と曖昧が
心の一部に地所を得て時折
イカが墨を吐くように
クジラが潮を吹くように
驚いたり面喰ったり
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