船旅/ただのみきや
 
してさえいる


人が死に人が生まれ
価値観は殺され また新たに捏造される
おのおのが好みの主義思想を枕に
快楽と死の狭間で翻弄され続ける
船は沈まない
古びても荒廃しても
革命が起きても戦争が起きても
いのちが次々入れ替わり
船の姿が変容しても
時が永遠へと流れ落ちる
時空の果て
終わりの終わりまで
船は沈まない


暗雲が立ちこめて
誰もが嵐を予感している
予感しているから
幼いころの母の胸や
日常のささやかな儀式
隣人とのいつもの会話など
掴んでいたくて手を指を泳がせている
不安を煽ることにのめり込み
何かが圧倒的に変容することを
どこか
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