夕暮れる夜/竹森
 
加齢臭漂うスーツ姿のおじさま方でごった返していました。事故とアナウンスされていますけど、なんでも投身自殺があったのだとかいう話です。朝っぱらからよくやるなーと、携帯を覗く振りして首を傾けて、斜め後ろのサラリーマンの欠伸を華麗にかわし、暇なので私、人間の数を数えることにしたのでした。一個、二個、と、ゆで卵みたいな人間の鼻の数を数える事で計上してゆきました。
 あの人が眠っている隣で私は昨晩も沢山のゆで卵を泡立つ熱湯の中に産み落としました。それを片手間に昨晩は更に、洗いたての少し濡れたまな板の上に割り落とした生卵の、薄膜に包まれた卵黄に、(バースデーケーキを切り分ける時に切っ先に宿った優しさがまだ仄
[次のページ]
戻る   Point(0)