夕暮れる夜/竹森
 
くて。



(人の手と手が電柱と電柱を繋ぐ事が出来ても
(電柱はあなたと私を繋ぐ事が出来ない
(そんな感覚



 それは蝶々ではなく、伏せられた文庫本でした。涙で文庫本が腐敗していく夢から目を醒ますと、部屋は真っ暗。夕暮れ時に眠ってしまったからでした。
 スーパーで買った蛍がヨレヨレの白いビニール袋いっぱいに詰め込まれています。私、床に投げ出したままだったそれを手に取り、一番上の一匹を摘み上げます。冷蔵庫から取り出した冷水を注ぎ、瞬く間に結露で表層が白く濁っていった透明なグラスの水面に、お腹を押して無理矢理に発光させた蛍の尻部を浸して揺らし、青白い光の粒子が冷水の中にサラ
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