チリ散りになったんだけどカメラ目線で/末下りょう
 

南米、チリ共和国。国の標語は(理性によって、または力によって)
そんなやたらほそながい形をした国の北部の小さな町で炭鉱夫をしているエンゾさん(仮名)は立派な口髭と張り出たお腹を揺らしながら毎日せっせと銅を集め、一日の仕事が終われば仲間と酒場でその日の無事を祝い、水色の壁をした家では愛する妻が夕食の支度をしてエンゾさんの帰りを毎晩待っていた。
でもエンゾさんには秘密があった。エンゾさんは酒場の若いウェイトレスと浮気をしていた。鉱山とワイン畑しかないような小さな町でおこる浮気の噂は必然的に妻の耳にも届いた。ある日、妻は夫をやさしく問い詰め、比較的簡単に浮気を白状させた。エンゾさんもこの感じなら
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